トモコヴォイス会報誌vol.64
「自然研究家たちとの出会い」
ー 上郷森のホールでライブ&トーク ー
横浜市のなかで一番大きな森の上郷の森(横浜自然観察の森)。
そこに百名収容できるホールがある。
八月十五日にここで『くじらが泳ぐ森 ライブ&トーク』
というイベントに出演した。
どんなライブかというと、自然を学び考えるというテーマでお話をしてくれる
研究科、博士や先生といわれるゲストスピーカー五名と私で、トークと演奏を
交互にといった二時間半のステージ。
当日はじめて全員と顔を合わせた。
お堅いイメージの研究家たちと私がいっしょにやっていけるかと
不安もあったが、ミーティングルームへ入ると、とても和やかな雰囲気で
皆さんとても人の話を熱心に聞き、優しい方々だった。
自然観察の森のチーフレンジャー古南幸弘氏。
彼は、森に来た皆さんに、ここはどんな森か、
どんな生き物がいるのかを森のなかで話してくれる人だ。
ここは森なんだけど、地層を調べると大昔は海だった。
昔の海の潮干狩りが出来ると教えてくれた。
沖縄に住む絶滅危惧種のジュゴンを守るため、彼らの餌
(海藻の藻)の調査をしたり草食動物の研究をされている
吉田正人氏。
なんとジュゴンは日本で三頭しか残っていないのだそうだ。
昆虫好きな西田貴明氏。
彼は大学や研究室で生物について
研究をしていくが、そこにいるだけでは世の中が変わらない、
素晴らしい生き物たちの存在を知ってもらいたいと
民間企業三菱UFJの政策研究事業部にいて、どんな人に
どんな事業にお金をかすかちょっとでも環境をよくできる
ところへの投資をしている。
そして、次に山田海人氏。
一番の年配の六十代男性だ。
海の生き物を研究、水深300m以上を深海という。
日本初の深海居住実験「シートピア計画」の支援潜水ダイバー、
深海に人間が住めるかを研究している。
海の自然界の面白い話をしてくれた。
体長20m~30mのマッコウクジラが、水深2000mに住むダイオウイカ
(これも体調17mある)を食べる話をしてくれた。
イルカと同じくクジラも超音波をだし、深海のダイオウイカの
いる場所がわかる。
一気に静かに潜っていき、みつけると目と目のあいだの急所
(神経の中枢の場所)に超音波を強くあてイカをフラフラにさせる。
それでガブッと食べていく。
そして食べ終わると地上に向かって空気を吸いに上がっていく。
この全ての工程にかかる時間は一時間半。
それがクジラが息を止めていられる時間なのだ。
でも上を見上げればそこには天敵。
イカを食べて泳ぎ疲れているクジラを待ち受けている者、
それはシャチだ。
シャチは天敵がいない。
唯一海の生き物で寿命を全うできるのはシャチなのだそうだ。
シャチは自分よりも何倍も大きいマッコウクジラを食べる。
たった二、三時間で、空気が足りないクジラを
呼吸ができないようにさせ安楽死させる。
そして一番美味しいクジラの舌を食べるのだ。
海の生き物たちの壮絶な生き方を感じた。
最後に長島美紀氏。
彼女は歌手MISIAといっしょにアフリカ支援活動をしている。
実は日本の私達の消費に関係している。
先進国の利益からアフリカの木がなくなったり、
アフリカの世界遺産が破壊されている。
環境が悪いと治安も悪くなり、まして教育もできない、
悪循環に陥るのだそうだ。
ステージに写真を写したりして、彼らの自然体験や世界の
現状に対しての想いを話してくれる。
その場所へいき、生身の体で感じている彼らだからこそ
熱く語れるのだろう。
今の私たちが生きている世界で何が起きているのか、
人間の傲慢さから壊されてしまっているのならば、
その事実を認め、治していきたい。
治せなくても止めなくては、と私は思う。
そしてトークのあと、
「鳥の人」「We are the world」などを歌った。
ゲストスピーカー達の想いもいっしょに
私に入ってきたような感覚か、
普段よりもますます自分の中で熱く感情が湧いてきた。
tomoko
トモコヴォイス紙面会報誌 vol.64より
(2012年9月1日)