トモコヴォイス会報誌vol.81
「私のルーツ」
ー軍師 黒田官兵衛を考えるー
私はロサンゼルス生活の中で、日本の歴史に興味を持ち始めた。
日本を離れ、他の人種と関わることで
自分が日本人であることを自覚するのかもしれない。
日本人の美徳である謙虚さは、
主張をするアメリカ生活の中で、
通用しない時もある。
なぜこういう考え方、感じ方をするのだろうと
自分自身に問い詰めると、そこで日本人のルーツ、
歴史に目を向け興味を持ち始めた。
鎖国をしていた平和な江戸時代の日本人と、
その前の戦国時代の日本人は全然違うのかもしれない。
もっと感情を表す主張する日本人だったのかもしれない。
そんな想像をすると面白い。
今年のNHK大河ドラマは、戦国時代。
武士、商人、百姓、どんな身分であろうと
国や天下までも動かしてしまう、
人間の本質、力量が試される時代だ。
ドラマにするには面白いだろうなぁ。
主役は黒田官兵衛。
この人は、軍師という立場の人で、戦いについてのエキスパート。
秀吉の横にいて、助言をしていく仕事の人だ。
頭がいいのだろう。
その時、その時で、現場をみる。
地形、土地柄、人間の心も読み取り、
刀・槍や鉄砲ではなく、知力で敵を下す。
ドラマで描かれていたが、黒田家の始まりは
官兵衛の祖父、もとは薬売りの商人だったらしいが
知力で播磨国の姫路城主となる。
そんな祖父が若い官兵衛に言う。
「人を殺すのではなく、生かして使うのだ」
戦乱を生きぬいていくためには、また生き残るために
どうすればいいかと考え、道を選ぶ。
たくさんの死を目の前にして、自分は生き残ったことを実感し、
生き残された自分たちはどう生きるかを深く考えていくのだろうと思う。
戦国だから、人が死ぬからこそ、
平和のありがたみを感じるのだろう。
真剣に世の中を見て、戦いがない平和を望み、
そのためにどうすればいいか武士が考えはじめる。
その歴史に続く現代の私たちは、
その平和のありがたみをやはり感じていたい。
黒田官兵衛は、捕まってしまって汚い土の牢屋に1年も幽閉される。
真っ暗な土の中で1年もいるなんて、想像できない。
それでも、人を裏切らないで自分の考えを曲げず生きてでてくる。
すごいことだ。
生死を彷徨い大変な苦痛に耐えた彼の辛抱、忍耐力、
信じる心はますます強くなったのだろうなぁ。
「人に媚びず、富貴を望まず」
彼の言葉だ。
信義を重んじ無欲である。
和歌や茶の湯を愛した文化人であり、
敬虔なキリスト教徒として信仰を貫き、家族を愛し、
家臣を大切にして、人の命を大切にする。
側室を持たずただ一人の妻と添い遂げた律儀さと、
一方巧みな弁舌と軍略で秀吉を支えた冷徹な軍師。
軍師だからこそ、愛が深くなったのかもしれないなぁ。
そこが面白い。
歴史上に名を残す、すごい人達はたくさんいる。
この黒田官兵衛も私たちと同じ日本人であり、
同じ土地、日本で生きたのだ。
私は彼の生き方に共感し、感動する。
そこにも日本人のルーツ、
私のルーツ(根元、起源)もあると思うのだ。
今年の大河ドラマ、楽しもう~~。
tomoko
トモコヴォイス紙面会報誌 vol.81より
(2014年6月8日)