トモコヴォイス会報誌vol.57
「飼い主と動物」
ー チャが糖尿病になった ー
私の愛猫二匹、チャとブー
人懐こいオス猫のチャ、
とてもシャイで人見知りをするメス猫のブー。
兄妹で性格は正反対。
ロサンゼルスの保険所(シェルター)から
生後三週間で引き取り、十四年の付き合いになる。
私と一緒にアメリカから日本へ飛行機に乗ってやってきて、
この二月で十年となる。
日本に来て、餌をあげる人間がふえ、日本の生活、人にも慣れて
体重も七キロまで増えていってしまった。
今まで二匹といっしょに寝ていたのに息子が生まれてからは
悪いと思いながらも、寝室に入れないようにした。
赤ん坊の世話に私が忙しく、今までよりも二匹と距離が
できたように私は感じていた。
でもチャは息子が耳を引っ張ったり、叩いたりしても
されるがまま。
息子がすることを受け入れたまま息子が泣くと
近くに寄り添うようになっていた。
ブーは相変わらず、マイペースで大泣きすると
ささっとあっちへいってしまうけど。
息子も「チャとブーがいるよ」というと、
泣いてぐずってもそちらを向く。
餌もやりたがるし、自分がされるように
チャの口をふいてあげたりもする。
私は、チャとブーが息子を受け入れてくれたことに感謝し、
二匹に私が変わらず大切な存在だと思っていることを
感じてもらいたいと思っていた。
そんな矢先にチャが急にやせていったので
病院で診てもらった。
なんと糖尿病ということがわかった。
チャが食べ物に執着し、ガツガツしていて
水もたくさん飲みトイレもしょっちゅう行って
いたのはそのせいだったのだ。
そして一月からチャの通院、朝、晩の毎日二回の
インスリン注射がはじまった。
自分の注射の時ですら針が刺さるところを見たくない。
あの先っぽがじっくりと刺さっていくのをみるなんて、
ひぇ~こわいこわいって思ってしまう私が、
チャのためにはと、心を冷静にし集中して
落ち着きながら注射しているのだ。
はじめて入院することになり、ケージごと、チャを病院に預けてきた
帰り道、私はあらためて、チャの人生が幸せだっただろうか?と思った。
私はチャがいてくれて、心が休まり、励まされ、温かい気持ちになる、
そんな時間を過ごすことができた。
アメリカで一人で暮らしていた自分がやってこれたのもこのチャと
ブーのおかげなのだ。
人間の心がわかるように、動物は寄り添ってくれる。
飼い主と、動物、人間同士にはないコミュニケーションがある。
チャにありがとうの気持ちになり目に涙があふれてきた。
帰ってくると一人(一匹)ブーが待っていた。
いつもと違うのがわかっているのだろうなぁ。
チャとブーは、ケンカのするけど、やっぱり仲良しだ。
私にくっついてくる。
私は、ブーにチャのことを話し、ブーによろしく頼むと言った。
先日、またチャをケージで病院に連れていくとき、
道の向こうから柴犬とおじいさんがやってきた。
みるからにその柴犬は老犬だった。
頭が大きく見えるのはきっと身体が小さくなったためだろう、
小さい目は下ばかり見ている。
少しヨタヨタと歩くその可愛らしい犬の姿とおじいさんが
とても良かった。
おじいさんも私に気付いて
「それ犬?」
と話かけてきた。
「いいえ、猫です。これから病院に行くんです。
うちのは十四歳なんですけど、可愛い犬ですね~
何歳ですか?」
と聞いたら、
「十六歳だけど、まだまだトイレ行きたい時にちゃんと
教えるんだよ~ だから一日三回もこうやって散歩してるんだ」
と笑顔で嬉しそうに話してくれた。
飼い主と動物の大切に思い、思われている絆を感じた。
いい二人(人と一匹)に会えて嬉しかった。
さぁ、チャ、良くなるんだぞぉと
ケージから私を見ているチャに言った。
tomoko
トモコヴォイス紙面会報誌vol.57より
(2012年2月1日)