トモコヴォイス会報誌vol.42
「生きる力」
ー新しい命を迎えてー
十か月の妊婦生活を過ごし
九月初めに無事出産した。
元気な男の子の誕生だった。
それから二か月が経ち、
赤ん坊はすこしずつ外の世界に慣れていき、
親は日々の生活から自分は親なのだと実感していく。
今までの生活から一変して
赤ん坊の時間に合わせて周りが動いていくようである。
笑顔を見せてくれると
一瞬で周りの人間も笑顔にさせてくれる。
たくさんの大人が赤ん坊の笑顔一つで、
純真になり心が動くようだ。
話かけるときにだいたい声のトーンが一つあがる。
女性はもちろんだが、普段は物静かな男性までもが
そのように変身して声が高くなる。
面白いものだ。
魔法のようだなぁと感じる。
実は十月初めに乳腺炎になってしまった。
母乳が溜まってしまい炎症がおきるという病気だ。
とても痛く熱も出た。
初めての経験でこれが何なのかすら私にはわからないまま
痛みに耐えている日々だった。
赤ん坊を連れてはじめて電車にのる。
泣くのではないか、周りの人に迷惑かけるかなぁと
私はドキドキだった。
予想ははずれなんとなく乗れた。
スヤスヤと抱っこひもの中で寝ている。
私は自分をリラックスさせるためか
寝ている子供に向かって、
「はい、今どこどこに着きました。」
「はい、今降ります。」
とひとり言のように声をかけていた。
乳腺炎は赤ん坊に飲んでもらうことで治るというのだ。
なんと子供と母親の共同作業で
この病気を治すという。
ほーっ、本当なのだろうかと思いながらも
日々授乳とすると確かに治っていく。
あ~っ子供に救ってもらった。
魔法の力がここでも感じられた。
スヤスヤ寝入る
お地蔵様のような顔の我が子に向かい、
ありがとう~
感謝の気持ちがあふれてきた。
こうやって母親は子供に励まされて、
この子の母親にんっていくのかもしれない。
赤ん坊は生きる力がみなぎって
生きよう生きようとする。
ちょうど草木の芽が空高くぐんぐん伸びていくように
きっと人間の本質はこれなのではないかと思う。
生きよう生きようとすること。
誰もが死ぬまで生きようとしているのだ。
生きないように生きている人はいない。
大人になると頭の中で否定的になってしまったりするが、
本来は身体の細胞全部、生きよう生きようと前向きで、
ほっといても成長し、より良く生きる方向へ
生きようとしているのだと思う。
ビートルズの「Let it be」の歌のように、
否定的に考えず、そのままにしていればいい方向へ。
生きる力が湧いてくれる。
そういう力が生命には備わっているのではないかと
赤ん坊を見ていて考えた。
だからきっと、大人は生まれたばかりの生命に感動し、
希望や幸せを与えてくれると感じるのかもしれない。
近頃はあやすと笑うようにまでなった。
いつもギャーギャーとこれでもかと、泣いた赤鬼になるが
この笑顔でいちころ、
すべて良し、◎。
こちらも笑顔、スマイルになる。
人間の誕生はすごいものだ。
tomoko
トモコヴォイス紙面会報誌 vol.42から
(2010年11月1日)