トモコヴォイス会報誌vol. 4  

「自然と音楽」

小さい頃は、「夏休み」ときくと心が躍るほどワクワクしました。
その夏休みは毎年、私と妹は両親が仕事のため母の実家、山形で一ヶ月は過ごしていました。
田んぼ、山、川に囲まれた田舎です。
朝にはいとこの通う小学校へラジオ体操に行き、昼にはそこのプールで泳ぎました。
夜には蛍もたくさんいて、今でも夏の稲穂の緑やにおいを思い出します。
好きな音楽をウォークマンで聴いて自転車で田んぼを駆け抜けていく。
ヒーっ風がすごく気持ちいい。

毎年やってくる山形駅に降りると山形のにおいがしました。
駅に来るだけで楽しさ、嬉しさ、懐かしさが今もあります。
現在は随分変わってしまいましたが。
山形には自然がたくさんで小さい時の思い出もたくさんです。

2年前の夏、その山形に演奏に行くことができました。

私はアメリカで使っていた音響機材を帰国時に全て持って帰りました。
2匹の愛猫も一緒に。その機材を日本でも使っています。

その機材を愛車黄色のダイハツNakedにすべて積み横浜から6時間、
首都高を通り山形へと向かいました。

荷物がたくさんで唯一の人の母は助手席に座り二人のドライブ。

東北自動車道から山形へと山を下りる時にちょうど夕暮れ時で、
先々の山の峰が遠くの方まで広がるさまを高い位置から見下ろせました。

遠くの山は影のように青く薄く永遠と続き、その美しさは今でも忘れられません。

ドライブしながら日本の自然はなんて美しいのだろうと感嘆でした。
ロサンゼルスや、アリゾナにある山とはまた違って品格や繊細さのある美しさです。
こういう自然があるから、日本の美という文化、日本人特有の美的感覚が生まれるのかなと思います。

山形に着き、田舎のおじさん、おばさんも「よく来た」といつも喜んで迎えてくれるのです。
今亡き祖父母もそうでしたが温かい自然に温かい心で迎えてくれると感じます。
大きな畳の部屋にゴロンっと寝っころがるのは気持ちいい。
お盆のお線香のにおいも気分が落ち着きます。
そして必ずスイカを食べます。

父は本当にスイカが好きでした。
木魚がわりにお供え物のスイカをたたき、めちゃくちゃなお経(冗談)を
大声で唱え遊んでいました。

父が、です。

小さい時は父を先頭にしていとこ達とそんな遊びで大笑いしていました。
次の日にチェリーランドというたくさんの人が集まるお土産屋さんがある

サービスエリアで演奏しました。
私は色々なところで演奏してきましたが、こういう普通の人が集まっていて
そこで急に歌が聴こえてくるくるというストリートライブならではの演出が好きです。

どんな人が聴いてくれるかを立ち止まってくれるのか、
どんな出会いがあるのか、

その発見スリルが楽しいのです。
なんてってお客さんがすぐ近くですからリアルにその反応が感じられます。

父はその日新幹線で演奏に間に合うように横浜からやってきました。
はじめて田舎のおじさん、おばさん、親戚、いとこも聴きに来てくれたのです。
あとになってわかったのですが、身内のおじさんの方が緊張していたそうで、
私の近くに寄らず影からこっそり見守り、聴いていてくれました。
あたりまえですが、演奏しながら私は聴いていただいている皆さんの方を見ています。
どんな人がいるかなぁって見て、皆さんに向かって歌うことが楽しいんですね。

山形でもおじいちゃん、おばあちゃんから子供たちまで
たくさんの方が温かく見守り聴いていてくださいました。
感謝でいっぱいです。
その日は天気が良く夏の空、雲でした。
その空の下でアルバムの「fly to the sky」を歌いました。
すごく気持ちよくて嬉しい演奏になりました。
自然の中、思い出の中、帰国してからの嬉しい演奏の一日でした。

実はその山形の親戚一同がこないだの4月の春コンサートにやって来ました。
山形の風がリリスホールに広がりました。

8 月 19 日、この夏の思い出をコンサートに持ち込みます。
皆さんとお会いするのを楽しみにしていますね。

vol4

tomoko
トモコヴォイス紙面会報誌 vol.4から
(2006年7月7日)

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