トモコヴォイス会報誌vol.28 

『現役指揮者 〜小澤征爾』
ー 音楽は人種、時代を超える ー

 

こんにちは。お元気ですか?
暑い日々、ダラ〜っと過ごしちゃいそうになると
気持ちをシャキッと引き締めて身体ストレッチをします。
さぁ〜今月も元気に行ってみよ〜。

アメリカへ行ってすぐ、日本食お弁当屋さん『金太郎』でバイトをした。
経営するのは80年代に移民をしてきた夫婦だった。

なんとびっくりこのおじさんとおばさんは音楽家だったのだ。
おじさんはトランペットをおばさんはロサンゼルスで
たくさんの生徒を教えるピアノ教室の先生でもあった。

厨房でいつも音楽の話をした。
彼らはバリバリのクラシック音楽。
ジャンルが違ってもありがたいことに、
私はいろんなことを教えてもらったのだ。

ある時、小澤征爾のビデオを貸してもらった。
初めて私はその世界的著名な指揮者Seiji Ozawaを知った。

1950年彼は短大卒業後スクーターで貨物船で渡仏する。
本場のヨーロッパで指揮を学びたいといろいろ策を練り、
ついに富士重工からラビットスクーターを借りて、
貨物船で神戸港からマルセーユに向かう。

二ヶ月ほどして、ようやく到着。
その後借りたスクーターに乗りスクーターの宣伝をしながら、
二週間ほどでパリに着く。
(この頃は海外に行くのは非常にお金がかかり、
また一般的ではなかった。)

西洋人の中にひとりアジア人。
英語もそんなにいい発音ではない。
でも巨匠指揮者カラヤンから教わっているそのアジアの青年は
活き活きとしていて、カラヤン、また周りの人から認められ
愛されている様子がわかった。

指揮をしているその表情や目が真剣で音楽に入り込んでいる。
細い指揮棒をただ振っているだけなのだが一振り一振りが力強く、
そこから大きなエネルギーが隅々にまで広く伝わって行くようだ。

単身渡米をしてきたばかりだった私はとても共感し
その時から小澤征爾を尊敬し好きになった。

NHKの『100年インタビュー』という番組で七十三歳の小澤征爾がでていた。
ビデオで見た若い青年ではなく白髪の小澤征爾がインタビューに応える、

その姿は若い時と同じく活き活きしていて目が輝いていた。
指揮者とはどんなものかという質問にことぼを選び話す。

外国に住んでいると手のジェスチャーが多くはなるのだが
職業の指揮者ならではなのか
手をふんだんに使い自分の思うことを表現する。

指揮者は、『invite』招くことだ。
これを弾けと押しつけて指示するのではなく
演奏家が弾きたいように弾いてもらう。

それが演奏家も気付かないように指揮者の思うところへ招いて
音が1つになっていき、良い演奏になる。

クラシックは譜面に書いてるのでそのことだけを演奏すれば
指揮者はいらないようだが、そうではなくて、悲しい表現でも、

うわぁと激しく泣く悲しさ、
涙が静かに出る悲しさ、
ぐっと涙をこらえる悲しさ、
様々な種類の悲しさがある。

音楽には正解はないのでどれをしてもいいのだが
指揮者が一つの提案をする。

だからこそその曲を作った作曲家のことを勉強し、譜面の奥や
裏にあるものを読み取ることが大切であると彼は言う。

一曲を勉強するのに五百時間を費やすこともあるそうだ。
これは『実験』なのだというのだ。
結果は後世の人たちが判断するのだろうが、
西洋音楽を日本人がすることにたくさんの反発や苦難があった。

何年も前の人間が作ったものを彼は
人種や時代を超えて理解ができると信じている。

それがここまでやってこれて来た
エネルギーの源なのだろう。

彼の笑顔や頑なに語る真剣な眼差し、
偉ぶらなくその辺のおじさんのような親しみやすさ、
この人の音楽を聴いてみたいって思わせる。

彼の100年後の人類へのメッセージ〜
『戦争のない地球、人類が 一つになっていますように』

音楽がその力になってくれるのかもしれないなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

tomoko
トモコヴォイス紙面会報誌 vol.28より
(2009年8月1日)

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